

Charles Mingus / Let My Children Hear Music ( 米 Columbia Records KC31039 )
自作の楽曲をラージアンサンブルで演奏するミンガスが好んだ形式による傑作の1枚。どの曲もキャッチーでわかりやすく、ミンガスの作曲能力の高さが改めて証明された内容だ。アドリブで音楽を作る楽しさを聴くのがジャズであるが、このアルバムのように楽曲の良さを聴くことが優先するようなアルバムはジャズの中では珍しい。そういう意味ではロックやクラシックの名盤を聴く感覚に近い。数多くの有名ミュジシャンが入れ替わり立ち代わりスタジオに入って録音されているのでその1人1人に言及することは避けるが、そういうミクロの視座での聴き方はそもそも向いておらず、もっと音楽全体を大きく受け止めるような聴き方になる。
クラーク&ボラーンのビッグバンドのような劇的な展開もあれば、マリア・シュナイダーのような幻想性も頻繁に顔を出すなど、その表情の豊かさは他に例を見ない。それでいて決して無軌道にはならず、強い求心力で音楽がまとまっている。60年代に残した音楽を更に発展させてより重層的に複雑で柄の大きい音楽になっている。1曲目の "The Shoes Of The Fisherman's Wife Are Some Jive Ass Slippers" はいかにもミンガスらしい抒情的なメロディーが幾重にも織り込まれて重なる名曲で、作曲を何よりも重視したミンガスの想いが結実している。この人は作曲家としてもっと評価されるべきだけど、複雑な曲想が多いせいかなかなか理解が進んでいないように見えるのは残念だ。
ジャズ界が迷走した60年代も70年代も彼はこのスピリッツとスタイルでジャズの王道をブレずに守り切った。多彩な若い才能を呼んで自身の掌の上で自由に演奏させたところはアート・ブレイキーに似ているけれど、ミンガスは自身の創り出した劇空間に招いたところが違った。そういうところがジャズの世界では稀有な存在だったと思う。